間取り変更の構造と劣化及び予算、高齢者対応と浴室仕様について
もくじ
1.はじめに
2.間取り変更を伴うリフォームの間取り計画及び注意点
3.高齢者向け改修
4.介護住宅改修
5.まとめ
1.はじめに
家の間取り設計をするときに、いろいろ検討するべき事があります。
動線計画やキッチンやトイレの位置、デッドスペースを出さない工夫などです。
もっと大きな視点では、数年後、数十年後の生活を見据えた設計であるかが重要です。
また、現状の家族の状態を考慮をして、より住みやすい住宅を目指す事も必要です。
ここでは、このような事を考慮しながら、高齢者向けのリフォームの間取り及び設備などの必要な仕様について、考えていきます。
2.間取り変更を伴うリフォームの間取り計画の注意点
リフォーム時の間取り変更には注意をすることが、いくつかあります。
・構造についての注意点
壁式住宅以外の建物は、基本的に柱と梁によるフレーム(スケルトンと言う事もあります)に屋根構造、壁構造、窓、間仕切り等を構成して成り立っています。
柱や梁は家の基本であり、撤去してはならない柱が存在しています。
間取り検討をすると、その柱が邪魔になる事がありますが、当然ながら抜いてはいけません。
施主やリフォーム業者の知識不足で、大事な柱が途中で切られている危険な家を何回か見た事があります。
耐震性など問題以前の問題なので、そうならないようにご注意ください。
間取り計画は抜けない柱を中心に実施します。
・間取り以外のリフォームの注意点
間取り以外にもリフォームで注意することがあります。
<予算と予想外の劣化について>
リフォームを実施すると施工前には判らなかった劣化事項が判明することが良くあります。
湿気などによる柱や土台の腐朽など、浴室周りで多く見られます。
また、時々ではありますが、手抜き工事を発見することもあります。
珍しい例では、立派に見えるお寺の柱の足元が50cm位、継手なしに、足してあった事もあります。
リフォームでは、ほとんどで、当初の計画通り、追加増減無しで終わったことが無い、と言っても良いです。
予算については、以上の事から、少し余裕をもって計画をすることが重要です。
特に、請負契約時に低予算を求めすぎた結果、劣化事項を改善せずにリフォーム終了なんて事も、多く聞きます。
当然、何年かすると、家に狂いが生じる可能性が高いです。
何のためにリフォームするのかってことになります。
<電気設備、給排水設備について>
リフォームを実施する場合、電気設備配線や給排水設備配管をやり直す方が良いです。
隠ぺい部なので、紫外線による劣化は少ないと思いますが、今後の使用年数を考えての事です。
案外、忘れがちですので、見積もりの際には注意してください。
項目にない場合、古い配管などを再利用する事になる可能性が高いです。
3.高齢者向け改修
高齢者向け改修について考えます。
リフォーム設計時の車椅子の取り扱いについて考えます。
自走式の車椅子の必要スペースは大きく、限られたスペースでは、良い設計になる事は少ないです。
基本的には、介助付きの車椅子移動と考えた方がよさそうです。
老老介護の場合、平面的な移動しかできないと考え、その範囲内で生活が収まる方法を考えます。
例えば、トイレや収納スペースの追加などです。
この場合、将来的な事は、後で考えることになります。
歩行移動を基本とした、バリアフリー計画を検討します。
古い日本家屋では、廊下と和室の間に段差があったり、玄関からの昇降段差が大きかったりします。
そのような場合、床の高さを揃えて、フラットにします。
大きな昇降差は、昇降の段数を増やして、蹴上寸法を15cm程度にします。
歩行を基準とする場合、スロープの方が転倒リスクが高いです。
段を設置する場合、手すりを設ける事は必須ですが、段鼻に目立つ色の滑り止めテープなどを取り付けると良いです。
浴室を改修を考えます。
ヒートショックを防ぐ事や、転倒防止、浴槽内安定を考慮します。
現在、リフォームをする場合、ほとんどがユニットバスとなります。
冬場の浴室内の低温を防ぐために、最近では床暖房を設置する事もあります。
基本的には、床、壁、天井と浴槽をしっかり断熱し、なるべく室内温度に近くなるように工夫します。
浴槽の断熱は、お湯が冷めにくいので省エネ効果が高くなります。
転倒防止には、滑りにくい床材の選定や、手すりの適切配置をします。
浴槽内の安定では、浴槽の形状を吟味します。
浴槽内手すりや浴槽内ステップなど、安全に入浴できるものを選定します。
浴槽内に移動するときに一度浴槽の縁に腰掛けるように考える事もあります。
手すりを使って、おしりを支点に回転します。
床上に浴槽を置いたタイプのユニットバスもあります。
介助入浴をメインとする場合、この形式がよさそうです。
いずれにしても、各メーカーのショールームにて浴槽の見学、体験をするとよいでしょう。
4.介護住宅改修
介護住宅改修は、基本的には介護保険を利用して実施する事が多いです。
介護保険の適用改修工事には次の種類があります。
(1)手すりの取付け
(2)段差の解消
(3)滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
(4)引き戸等への扉の取替え
(5)洋式便器等への便器の取替え
(6)その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
20万円までの金額が保険の対象となります。
具体的にはケアマネージャーと相談して決定します。
大規模な工事と併用しての利用もできますが、介護保険の対象者のみが利用できます。
間取りとしては、主寝室を基準とした動線計画が必要です。
特に車椅子の場合、外部の援助を受けるための通路及び出入口を考えましょう。
5.まとめ
現在の新築工事では、バリアフリーは常識となっています。
リフォーム工事でも基本的にはバリアフリーにしますが、構造的に不可能な場合もあります。
段差などは目立つようにして、危険を回避するなどの工夫が必要です。
間取りについては柱の位置などの基本的な事は通常も高齢者配慮も同じです。
施主様や住まいになる人の情来の状態を検討しながら今現在を過ごしやすく改修しましょう。
設計、検討に時間をかけて、後悔しないリフォームを目指してください。
参考になるとうれしいです。
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