<はじめに>

中古住宅を購入前に、その住宅の状況を専門家が調査する「既存住宅状況調査」というものがあります。

建築士などが、講習を受けて、技術者として調査をします。

内容は、構造耐力上主要な部分に生じている欠陥や、雨漏り等の劣化事象・不具合事象の状況を、目視、計測等により調査します。

リフォーム済の場合は、判りにくい事もありますが、ある程度は確認できます。

実際に技術者に調査を依頼すると、そこそこの費用が発生します。

そこで、今回は、調査の内容や基準の概略を書いていきますので、中古住宅を購入予定の方は、参考にしていただき、検討にお役立ててください。

マイホームなどの現在の状態をチェックすのにも役立ちます。

ご自身で、一度、お試しください。

今回は、木造住宅の場合です。

 

<構造耐力上主要な部分に係る調査部位>

1.基礎

私の住んでいるところは、伊賀の田舎です。

古い家は、玉石基礎と言って、石の上に家が載っている状態です。

自然の免振構造とも言えますが、現在では基礎と建物は、緊結しないといけません。

ここでいう基礎は、鉄筋コンクリート基礎です。

もちろん、ひび割れの事などは、無筋コンクリートでも適応できます。

・幅0.5mm以上のひび割れ

・深さ20mm以上の欠損

・コンクリートの著しい劣化

・鉄筋の露出

鉄筋コンクリートは鉄筋で引っ張り力、コンクリートで圧縮力の強度を期待します。

鉄筋が錆びて、強度が低下することは避けなければなりません。

換気口などの周りにクラックが発生する事は良くありますが、大きなクラックが何か所もあろ様な状態の場合、地盤不良の可能性があるかもしれないです。

マイホームの場合、セメント注入などで改善対応できる可能性もありますが、一番大事な所ですので、注意してください。

 

2.土台・床組

基本的に、土台と床組は意味合いが全く違うですが、同時に検査するので、同じ項目になります。

床組の場合、やり直しができます。

・著しいひび割れ、劣化、欠損

 

3.床

床も、地盤沈下や土台、柱に寄与する物以外は改修できます。

年代によっては、合板の接着剤が弱い時があって、合板自体の不良が多いように思います。

・著しいひび割れ、劣化、欠損

・著しい沈み

・6/1000以上の傾斜(3m以上の点で計測)

 

よくビー玉を転がしている人がいますが、転がる家の人は多いはずです。

天然木の場合、当然反りますし、木も同じ反ります。

熱によって、どんな材料も収縮するし、許容される施工精度もあります。

そのような事に惑わされずに、傾斜の許容基準で判断して下さい。

傾斜は、表面の凹凸の影響を避けるため、少し離れた点の傾きを計測します。

実際はレーザーレベルが無いと測定できないです。

 

4.柱及び梁

・著しいひび割れ、劣化、欠損

・柱における6/1000以上の傾斜(2m以上の点で計測)

・梁の著しいたわみ

基礎に並ぶ重要な部分ですが、隠蔽されている家も多いと思います。

梁は、点検口があれば、確認できます。

 

5.外壁及び軒裏

・外壁下地まで達するひび割れ、欠陥、浮き、はらみ又は剥離

・複数の仕上げ材にまたがるひび割れ

・金属の著しい錆

・仕上げ材の著しい劣化

面による強さが損なわれていないかの確認です。

 

6.バルコニー

・支持部材又は床の著しいぐらつき、ひび割れ、劣化

 

7.内壁

・下地まで達するひび割れ、欠陥、浮き、はらみ又は剥離

6/1000以上の傾斜(2m以上の点で計測)

隠蔽部分の状態が推測できます。

 

8.天井

・下地まで達するひび割れ、欠陥、浮き、はらみ又は剥離

 

9.小屋組み

・著しいひび割れ、劣化、欠損

 

10.蟻害、腐朽

・著しい蟻害

・著しい腐朽

特に左官仕上げの浴室周りは要注意です。

 

 

 

<雨漏り等の劣化事象・不具合事象>

今も昔も雨漏れは、家を傷める原因です。

昔は、土壁の劣化などで、家自体の強度に問題が発生し、今では、断熱材の性能低下やカビ発生による健康被害など、必ず防がなければなりません。

構造を検査する際に、水しみ痕などが無いか、確認をする必要があります。

 

 

 

<まとめ>

傾きの確認などは、さげふりや水平器などを使って測定することはできますが、今どきは、レーザー墨だし機が無いと測定できないです。

よほど気になる人は購入して自身で確認してください。

調査の項目はおおむね記述の通りですが、私たち専門家は経験や知識をフル活用して、より正確な住宅の状況を確認します。

興味のある方は「既存住宅状況調査」で調べてみてください。